“いつでも同じ”だと、日々の生活を送るのにありがたい。でも、“いつでも同じじゃない”暮らしがちょっと増えたなら、みんなで幸せになれるのかもしれない ~ スローフード宣言 食べることは生きること#02
いつでも同じ
「いつでも同じ」は、どこに行っても同じ見た目で同じように存在し、同じ味がするべきであるというファストフード的価値観です。 ニューヨークで食べるハンバーガーとポテトとソフトドリンクは、世界のどこでもまったく同じハンバーガーとポテトとソフトドリンクとして手に入らなくてはなりません。そうでなければ何かがおかしく、しっくりこないから。 皆、いつも同じであることが大好きで、それが当たり前だと捉えています。今っぽいし、知らない土地でもホッとできるし、予定調和で安心できるからです。ところが、すべての商品、とくに食べ物をいつも同じで予測可能、つまり画一的に生産しようとすると、実はそのプロセスでたくさんのものが失われます。大切なものが無視され、無駄も出ます。文化の中に「いつでも同じ」が大きく広がると、個性が失われ、同質的な社会に向かい、社会コントロールがなされるなど、より闇の深い課題も浮かび上がるようになります。
海士の風出版「スローフード宣言 食べることは生きること」
ありがたい日常の「いつでも同じ」
「いつでも同じ」ことで私が享受していること、違和感があったこと、影響を受けてしまっていることはなんだろう。
私にとって「いつでも同じ」であることは、記憶に留め易く、考える手間も省いてくれて、日々の生活を送るのに時間と労力の節約に一役買ってくれている。それはきっと私だけでなく、ほとんどの人に浸透していて、各々の生活リズムを作っているように思う。
家の中をいつも同じに整えておくことで身体が覚えていて、考えなくても事が進むというのは、誰もが体感したことがあることだと思う。何かを進めるにしても、目途が立つから効率がいい。
外に出てみても、コンビニやチェーン店などは、地域が違っていても品揃えは同じだから、どこにいても同じものを手にすることができて、安心する。
電車やバスも、時刻表どおりにやってきて、予定外の事故で遅れることはあるにしても、バスの到着まであと10分あるから、ちょっとあそこのパン屋によって行こうなんてこともできたりして。
当たり前のように、「いつでも同じ」の恩恵を受けながら、日々の生活を送っていた私。でもある時、違和感を覚える出来事があった。
ズッキーニの援農で覚えた違和感
かつて私が会社員だったとき、毎日同じ時間に自宅を出て、同じ時間に会社について、たくさんの人々が行きかう場所で1日中働くことに、ストレスを感じていて。だから休みの日には土をいじり、物言わぬ植物たちと過ごす時間は癒しだった。
ある日、近くの農家さんが援農スタッフを募集しているという話があって飛びついた。その農園はズッキーニを主に生産していて、広大な畑にズッキーニがど~んと200株以上も植わっていて、人工授粉や収穫を手伝う仕事内容だった。
ズッキーニの果実は大きな葉の陰に隠れていることも多いので、初心者は見逃してしまい、収穫漏れが生まれがちなのだとか。決められたサイズは13センチ。成長の速いズッキーニは、収穫漏れした次の日には、もう17センチくらいにまで大きくなるというのだから驚きだ。大きすぎて箱にも入らないし、見栄えも悪い。規格外の、売り物にならないズッキーニは、全て破棄される。農家さんにとっても死活問題だ。
試しに食べてみた大きなズッキーニは、変わらず美味しかった。これはもったいない。
ズッキーニの収穫は真夏。ギラギラの太陽から隠れる事も出来ず延々と受粉と収穫をして、毎回軽く熱中症になりかけて仕事が終わる。暑さでぼーっとしている頭では、注意散漫で収穫漏れも起こりやすい。そんな過酷な環境でも、やり遂げる農家さんは凄いと思うと同時に、消費者が同じものを買う習慣が、たくさんの廃棄ズッキーニを生み、農家さんの仕事にも負担をかけていることに違和感を覚えた。
思い返せば精神的にも、少しでもいつもと同じでないと、とたんにリズムが崩れて、ちょっとイライラしてしまったり、過敏にいろいろな心配をしてしまったりすることがある。そんな些細な心配を解消するために、実は見えないところで誰かが無理をしていたり、何かが無駄になっていたり、物言わぬ植物や動物たちに負担がかかっているかもしれないことに気づく。私たちは心配し過ぎているのかもしれない。
そんな心配を解消してくれていた、私が当たり前と思っていた「いつでも同じ」には背景があって、その背景を知ると、「いつでも同じ」にしてくれていた人や生き物への感謝が芽生えてくる。そして、地球に共に暮らすものとして、その負担を少しでも和らげられないかとも思う。その気持ちが、小さなことから実践していく、そんな勇気をくれるのかもしれない。(つづく)
4月のFarm to table
スギナでお茶を作ったら美味しかった!もう雑草とは呼ばせない
この時期、つくしは野草として人気ですが、つくしと兄弟のスギナは雑草として邪魔者扱いですね。そんなスギナをお茶にして飲みました。
植物の旬のエネルギーは強力なもので、生き物である私たちもそのエネルギーを貰うことで身体によい循環が起こります。お茶にするのはエネルギーを身体に取り入れるのに一番手軽な方法です。
作り方は簡単!
①収穫。(もりのきこぽぅにも手伝ってもらって)
②1,2日天日干し。
③フライパンで煎る。
スギナはすぐに焦げてしまうのであまり茶色くならないうちにフライパンから取り出します。
④お好みでお湯を注いでも、煮だしても。
個人的には注いだ方がエグ味が少なくておいしいです。
以上でお茶の出来上がり。
味はほんのり甘く、ほんのり青臭い、クセは少なく胃がスッキリします。お子様も無理なく飲めますし一緒に摘んで楽しんでみてはいかがでしょうか。ミネラルや、ビタミン、アミノ酸など栄養も豊富です。スギナがお宝に見えてきたでしょう?
※カリウムが豊富に含まれているのでカリウム制限のある方は避けてください。
Writer
Shere
スローフード宣言 食べることは生きること
半世紀前——カリフォルニア州バークレーの小さなレストランからはじまった「おいしい革命」は、多くのアメリカ人の食習慣や食べ物に対する考え方を変え、全米の地産地消を広げ、世界中へと広がった。この本はその革命を引き起こし、料理人であり活動家でもあるアリス・ウォータースさんが、生涯のテーマである「スローフード」の世界観について初めて語られた本です。食べることが人と暮らしと世界にどのような影響をもたらしてきたか、その道筋を変えるために、私たちにできる事がありました。
海士の風(株式会社 風と土と)
スローフード宣言を発行された、島根県隠岐諸島の一つ「海士町(あまちょう)」出版社さん。 離島という土地柄、過度な情報や一時的な流行に左右されずに純粋に出したい本を出されています。小さな出版社なので一年間で生み出すのは3タイトル。だからこそ、心から共感し、応援したい著者と「一生の思い出になるぐらいの挑戦」をされています。
海士の風