生きものにやさしい、豊かな暮らしと生き方

エクアドルのアマゾンに住む先住民のシャーマンたちが、アヤワスカを用いた儀式を行う理由。現代にも息づく森の精霊と叡智

エクアドルのアマゾンに住む先住民のシャーマンたちが、アヤワスカを用いた儀式を行う理由。現代にも息づく森の精霊と叡智

あなたは人生の岐路に立った時、迷った時、どんな風に自分の未来を選んでいますか?

友達に相談する? 両親に相談する? Googleで調べる?
あるいは有名な占い師さんのところに聞きに行ったり・・・。

現在も続いている、ある先住民の文化では、シャーマンによる儀式によって、その選択をしています。

先住民の儀式・・・というと、神秘的な印象を受けますが、実は彼らにとっては生活、人生の大切な一部として、遠い昔から現代までつながり、息づく大切な知恵なのです。

今回はエクアドルのアマゾン熱帯雨林の中で、今もコミュニティを作りながら生活している、アチュアル族の儀式について書いてみます。

彼らが住むのは、日本から地球の反対側に位置する、南アメリカ大陸に広がる巨大なアマゾン熱帯雨林の奥地です。熱帯雨林の入り口から、小型ジェットとボートを使って奥地へと渡り、時には森林の中を歩いて進みます。

セスナ
小型ジェット(セスナ)に乗って
アマゾンの熱帯雨林
熱帯雨林の奥地へ

アマゾンの豊かな大地は、木の実や魚、動物などを育んでくれます。アチュアル族もその恩恵を受けながら、自然の循環の中で暮らしています。

森に住む精霊アルタンと繋がる、シャーマンという生き方

そんなアチュアル族は、人生の大事な岐路に立った時に「ナテム」と呼ばれる儀式を行います。儀式は部族のシャーマンによって執り行われ、コミュニティ全体、部族全体の方向性が決められます。

シャーマンになるには、男性が12歳くらいになった時に、シャーマンになるのか、あるいはアチュアル族の男性として生きていくか、自分自身で決めます。

シャーマンになる人はそこから修行を始め、”アヤワスカ”と呼ばれる神聖な薬のような飲み物を、日々飲み続け、自分自身がアチュアル族の森に住む精霊アルタンと繋がる準備をしていくのです。

そして無事に儀式が終わると、晴れて部族のシャーマンになることができます。

アヤワスカを用いた神聖な儀式とビジョン

コミュニティ・部族、あるいは個人にとっても結婚などの大切なテーマが出てきた時に、ナテムは行われます。神聖な儀式なので、儀式をする前は丸1日断食します。食べない、飲まない、動物性の食事は特に禁止されています。

そして、日中よく体を動かして疲れさせます。

夜になり、日が暗くなってくると、儀式を行うメンバーが集まり、シャーマンがアヤワスカを準備をしだします。アヤワスカに森の精霊アルタンのスピリットを吹き込んでいくのです。

儀式を受けるメンバーはアヤワスカを順々に飲んでいきます。

飲むとすぐにビジョンが見えてくる人もいれば、ふらついてきたり、クラクラする人もいるので、すぐ横になりじっとしておきます。

そして、さまざまなビジョンを受け取るのです。ビジョンとは意識のはっきりした状態で見る夢のような、アルタン(森の精霊)からのメッセージです。

次の日の朝、受け取ったビジョンをシャーマンに伝えて、ビジョンを読み解いてもらい、大切な選択を行う際の参考にします。

ナテム(儀式)を行う際には、意図を持つことが大事だと言われています。自分自身がなぜこの儀式に参加するのか、何をアルタンに問いたいのかを明確にすること。

  1. Don’t be afraid(恐れない)
  2. Do not control the moment(瞬間瞬間をコントロールしない)
  3. Surrender(降伏する)

儀式は私たち現代人の感覚を超えて、作用していくようです。

アチュアル族の人々

実はエクアドル のアマゾンには他にもたくさんの先住民の部族がいました。しかし、彼らは文明社会による自然破壊の波に飲まれて、生活を脅かされてきました。エクアドルは産油国であり、アチュアルのテリトリーも油田開発の候補地として狙われています。

戦士の伝統を持つアチュアル族はこれまで、外の世界からの干渉もはねのけてきましたが、石油資本となるとそのパワーは巨大で、苦戦を強いられています。彼らにとって生きる全てである森に、深刻な危機が迫る中で、アチュアル族はアルタンから受け取ったビジョンから、文明社会と共に生きる道を見つけようとしています。

私たち日本人も、はるか昔は森と共に暮らしていました。ところが私たちは、文明社会で生きているうちに、その生き方と叡智を忘れてしまったように思います。私たちもアチュアル族から学び、その感覚を思い出す必要があるのかもしれません。

次回はエクアドルや南米の先住民たちの文化的背景や、アチュアル族の文明社会との出会いと変化について書いてみたいと思います。

Writer

アースウィズダムジャパン

アースウィズダムジャパンは、地球の自然を守り、社会的公正を実現し、人々が精神的に充足して生きられるよう、地球上に住む先住民、および太古からの叡智を受け継ぎ、広めるための活動を行うことを目的として設立された団体です。

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