さて問題です。お米はどこで作られるでしょう?
そう、正解!
答えはたんぼ。簡単すぎましたね。
でも、田んぼは、お米を収穫するだけの場所と思っていませんか? いやいや、実は小さな虫や鳥、動物たちのレストランでもあるんです。
冬、水が抜かれた田んぼの中では、カエルやミミズ、ザリガニたちが土にもぐって暖かくなるのをじっと待っています。土の中なら雪が降っても大丈夫。暖かくて、ゆっくり眠っていられます。
春先、平地の雪がすっかり溶けて菜の花が咲き出す頃、気の早い鳥さんたちがレストランの開店を待ちわびて田んぼに集まってきました。が、残念! カエルもザリガニもオケラも、まだ土の中で寝ぼけていて、レストランのオープンはまだでした。でも、もうすぐですよ。
そんなある日、農家さんがトラクターで田んぼを耕し始めました。さあ、待ちに待った日がやってきました!
びっくりして土からはい出して来るミミズやカエル、オケラたちを待ちかまえた鳥さんたちが、さっそく「いっただきまーす」。 『たんぼレストラン』開店です!

耕された田んぼには、やがて水が張られて苗が植えられ、稲はお日さまをいっぱい浴びて、すくすくと育ちます。夏には稲の花が咲いて、しなやかに風に揺れる葉はまるで緑の海のようです。この時期、たんぼの水の中では小さなプランクトンや甲殻類、水生昆虫などがどんどん増えて、それらを食べにカエルや魚や虫たちが集まってきます。すると、カエルや魚や虫をねらって、小鳥やサギの仲間がやってきます。そして、それらを上空から狙う猛禽類も。 たんぼレストランは、大繁盛‼
人間は、繁栄のために、ずっと自然を破壊してきたと思いがちですが、それは主に、化石燃料を使い出してから後のこと。その前の、日本でいえば1000年以上の間、人は田んぼを中心とする里山で、食料や燃料、生活に必要な材料を調達する循環型の生活を続けてきました。田んぼや畑と里山は人工の自然ですが、例えば『たんぼレストラン』のように、多様な生き物を育むゆりかごになっていました。
化石燃料のパワーと由来の化学物質で、やりたい放題自然を壊してしまってしっぺ返しをくらい始めた人間ですが、この先どうしたらよいのか、この絵本がちょっと、ヒントをくれているような気がします。

Writer
あぷりこっとつりー
絵本と雑貨の店「あぷりこっとつりー」です。絵本は小さなお子様から大人まで楽しめるように、国内外の新刊&古本合わせて3000冊以上展示しています。お気に入りの一冊をゆっくりと探してください。雑貨はドイツと飛騨高山の手作り木のおもちゃや、店主が旅先で見つけた民芸品などをならべています。ほっとしていただける触れ合いの空間にで ...
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